短いダンスや耳に残るフレーズを知っていても、元の楽曲は聴いたことがない。誰かの動画で見た動きを真似していても、それを最初に表現した人は知らない。TikTokのような短尺動画のプラットフォームでは、作品の一部だけが広く知られることがある。

アイドルやアーティストにとって、バズは、それまで接点のなかった人に知ってもらう機会になる。ただ、断片に触れた人が、作品全体や作り手にも関心を持つとは限らない。たくさんの人に知られることを、長く深く理解されることへ、どうつなげられるのだろう。

投稿を推薦し、断片を再利用する仕組み

TikTokはFor Youフィードの推薦について、「いいね」、シェア、コメント、フォロー、視聴完了などの行動に加え、動画のキャプション、音源、ハッシュタグを判断材料にすると説明している。また、Stitchを使えば、他者の動画の一部を自分の動画へ組み込める。

推薦されるのは個々の投稿であり、音源や動作は別の投稿でも使える。元の作品を知らなくても参加できるため、模倣しやすい部分は文脈を離れて広がっていく。Diana ZulliとDavid James Zulliも、TikTokの機能や利用規範が模倣と複製を促し、「imitation publics」と呼ぶネットワークを生むと論じている。

こうした設計から、TikTokが文化を浅くしようとしていると結論づけることはできない。ただ、人や作品の歩みを知らなくても投稿を楽しめる仕組みでは、動きや一節への反応が、その背景への理解より先に広がるのは自然だと思う。

音楽を知る入口の、その先

短い接触でも、音楽を聴き始めるきっかけにはなる。TikTokがLuminateへ委託した2024年のデータの分析では、TikTok上の反応と音楽配信、楽曲保存、チャート入りとの関連が報告されている。委託関係を踏まえて読む必要はあるが、短尺動画での接触が、プラットフォーム外の行動へつながり得ることはうかがえる。

しかし、楽曲を見つけることと、作り手を理解することには、まだ隔たりがある。その人は何を目指し、以前は何を作っていたのか。今の表現は、過去のどんな選択から生まれたのか。短い接触を何度重ねても、それだけでは分からないことが残る。

バズを作ろうとするとき、この隔たりを忘れやすい。真似される振り付け、切り抜かれる言葉、冒頭で注意を引く構成。どれも作品を知ってもらう技術だが、その場の反応だけを基準にすると、伝え方とともに、表現したい内容まで流行に合わせて変わり始める。

投稿ごとに反応を得られても、前の作品と次の作品に関係がなければ、活動の積み重ねは見えにくい。文化の厚みと呼びたいのは、過去の表現を知ることで、今の表現の意味が変わるような蓄積である。その場で反応しやすいこととは、別の時間が必要になる。

活動をつなぐ目的と選択

では、作品ごとの挑戦を、一つの活動として積み重ねるには何が要るのか。自分は、「何を実現したいのか」と「自分たちは何者なのか」という二つの問いが必要だと考える。

何を実現したいのか。誰かを楽しませたい、新しい表現を作りたい、ある価値観や世界観を示したい。あるいは、有名になること自体を目指すのか。目的があれば、今のバズがその活動にどう関係するのかを判断できる。

自分たちは何者なのか。この問いは、作風を変えないという意味ではない。何を大切にし、何を選び、何を選ばなかったのか。過去から現在までの選択に、どんなつながりがあるのか。そうした選択と、それに意味を与える物語が、アイデンティティになるのだと思う。

このつながりが見えれば、作風の違う挑戦も、一つの活動の変化として受け止められる。流行に応じて表現を変える場合にも、何を引き継いでいるのかを示せる。掲げるキャッチコピーより、選んできた作品の方が、その人たちを説明する。

断片から作品へ、作品から人へ

バズによって接点ができたあとには、続きを知れる場所が要る。短いダンスから楽曲全体へ、楽曲から過去の作品へ、作品から本人の考えや歩みへ。プロフィール、作品一覧、長いインタビュー、ライブ、コミュニティなどが、そのための接点になる。

一度偶然に見た人が、次の作品を待ち、ライブに足を運び、ほかの人と語り合うようになる。そうした関係を作るには、断片がどの作品に属し、どんな活動につながっているのかを、表現する側も示す必要がある。投稿の推薦だけに任せていては、そこまでは保証されない。

受け取る側にもできることがある。耳に残った一節の元の楽曲を聴く。その曲が気になったら、過去の作品をたどる。短い動画で知った人の表現が、以前からどう変わってきたのかを見てみる。

バズを追うことと、文化を深めることは両立できると思う。ただし、その接続は自動ではない。広がった一節から一曲を聴き、一曲から作り手を知る。その続きを作り、次の表現へつなげていけるかどうかにかかっている。

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